2023/04/07 11:45
今日は、最近読んだ本の中から、
ぽかぽか陽気の春の日の読書にふさわしい1冊をご紹介しますね。
韓国を代表する日本文学の翻訳家クォン・ナミさんによるエッセイ
翻訳家としての日常がユーモアたっぷりに綴られています。
作者クォン・ナミさんは、
自身を平凡な人の代表格のように綴っていますが、
その平凡な生き方に、驚くほど共感でき、尊敬でき、
そして、思わず声を出して笑ってしまう愉快なエッセイでした。
「私にはできないことが多すぎる。いや、できることはない、と言ったほうが正確かもしれない。」(プロローグより)
こんな風に、
気負わず、肩ひじ張らず、それでいて軽妙な語り口に、
プロローグの冒頭から、ページを繰る手が止まらなくなりました。
アラ還世代だというクォン・ナミさん。
こんな風に決して無理せず、自然体で、
でも才能をたゆまず磨きながら社会に貢献できるアラ還になれたら、
なんと豊かで幸せなことでしょう。
私のこの紹介文だと、
クォン・ナミさんをご存じない方は、
ゆるゆるな人物像しかイメージできないかもしれませんが、
30年に亘り数多くの日本作家の作品を300冊以上も韓国語に翻訳した、
韓国を代表する素晴らしい翻訳家だそうです。
実は、私もこの本を読むまでクォン・ナミさんを知りませんでした。
この本の帯に、
私の大好きな小川糸さんの推薦文が載っていたので、
迷わず購入したのです。
エッセイの中で、
小川糸さんとの交流のエピソードも綴られていて、
大変興味深く読みました。
ふと思い出し、
昨年の私の手帳を見てみると、
やはりクォン・ナミさん、登場していました。
小川糸さんのエッセイ「真夜中の栗」の中に、
「クォン・ナムヒ」の表記で(韓国語の綴りはナムヒだが、発音するとリエゾンするのでナミという音になる)。
昨年読んだ「真夜中の栗」の中で、
小川糸さんの日韓の友好についての一節がとても印象的で共感できたので、
実はそのページをコピーして、手帳に貼っていたのです。
その一節の中に登場していたナムヒさんだったんですね!
読者に親近感を湧かせる不思議な魅力のある作家さんだなと思います。
他にもエッセイを出版されているようですが、
まだ日本語訳は出ていないようなので、
韓国に行ったら、是非原書を買って、ゆっくりでも頑張って読んでみたいです。
そして、最後に。
この「ひとりだから楽しい仕事」の日本語訳も素晴らしいと思いました。
クォン・ナミさんが日本語で執筆したかのように錯覚してしまうような。
特にユーモラスに綴られている部分は、
韓国語ではどのように書かれているのだろう?と、
逆に原書を確認してみたくなるような。
日本語訳は藤田麗子さんです。
「大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした」を翻訳された方です。
春うららかな日の一冊に、是非。
「ひとりだから楽しい仕事 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活」
クォン・ナミ・著 藤田麗子・訳 平凡社(2023)
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